いちごの病気対策|うどんこ病・灰色かび病の予防と治療

いちご栽培で深刻な被害をもたらすうどんこ病と灰色かび病の特徴、発生条件、予防方法、農薬を使った治療方法を詳しく解説します。風通しの改善、適切な水管理、古葉の除去などの栽培管理と薬剤散布を組み合わせた総合防除で健康ないちごを育てましょう。
いちごの病気対策|うどんこ病・灰色かび病の予防と治療
いちご栽培で最も深刻な被害をもたらすのが、うどんこ病と灰色かび病です。これらの病気は放置すると収量が大幅に減少し、最悪の場合は全滅してしまうこともあります。本記事では、これらの病気の特徴から予防方法、発生時の対処法まで、実践的な対策を徹底解説します。家庭菜園でいちごを育てている方も、いちごの育て方完全ガイドと合わせて本記事を参考にすることで、健康で美味しいいちごを収穫できるようになります。
うどんこ病の特徴と発生条件
うどんこ病は糸状菌(カビ)によって引き起こされる病気で、植物体表面にクモの糸状のカビを生じ、後にうどん粉(小麦粉)をまぶしたような白い粉状のカビが発生します。この病気の特徴は、葉の表面だけでなく裏面にも白い粉状の菌糸が広がり、やがて葉全体を覆ってしまう点です。

うどんこ病が発生しやすい時期は、主に気温が20度前後の時期で、季節でいうと春や秋に発生しやすくなります。特に日照不足や風通しの悪い環境では、菌が急速に繁殖します。葉が密集している場合や、窒素肥料を過剰に施用した場合にも発生リスクが高まります。
うどんこ病に感染した葉は光合成能力が低下し、株全体の生育が悪くなります。さらに果実への栄養供給が不足するため、いちごの糖度が低下し、サイズも小さくなってしまいます。早期発見と適切な対処が収穫量を守る鍵となります。
発生初期の症状を見逃さないことが重要です。葉の一部に白い斑点が現れたら、すぐに対策を開始しましょう。詳しい栽培管理方法については、土づくりと肥料の基礎知識も参考にしてください。
灰色かび病の特徴と発生条件
灰色かび病は、Botrytis cinereaという糸状菌(カビ)によって引き起こされます。初めは花弁や下葉など枯死した部分に病原菌が寄生し、これが果実への伝染源となります。病名の通り、感染部位には灰色のカビが密生し、やがて果実全体を覆ってしまいます。

この病気は気温が23℃前後で多湿条件のときに発生しやすく、特に晩秋から春の冷え込みによって施設内の相対湿度が上昇するとき発病が助長されます。ハウス栽培では、朝方の結露が発生条件となることが多く、換気不足が大きな原因となります。
灰色かび病の最大の問題は、果実への感染です。開花期に花弁に付着した胞子が、果実の成長とともに内部まで侵入し、収穫直前や収穫後に急速に腐敗が進みます。一度発生すると、隣接する果実にも次々と感染が広がるため、早期の対処が不可欠です。
また、この病原菌は枯死した植物組織で越冬し、翌年の発生源となります。そのため、栽培期間中だけでなく、収穫後の残渣処理も重要な防除対策となります。野菜の害虫・病気対策完全ガイドでは、他の野菜にも共通する病害虫対策を解説しています。
予防対策の基本|栽培管理で病気を防ぐ
病気の発生を未然に防ぐには、適切な栽培管理が最も重要です。化学農薬に頼る前に、まず栽培環境を整えることで、病気の発生リスクを大幅に低減できます。

風通しと光環境の改善
空気の入れ替えをして菌密度を減らすことが大切です。古い葉やわき芽を定期的に取り除き、株元への日光と風の通りを確保しましょう。葉が過繁茂になると、湿度が高まりカビが繁殖しやすくなります。特にハウス栽培では、天窓やサイド換気を積極的に行い、湿度を70%以下に保つことを目指します。
水管理と施肥
灌水は午前中に行い、夕方以降の水やりは避けます。夜間に葉や果実が濡れた状態が続くと、カビの胞子が発芽しやすくなります。点滴灌水システムを使用すると、葉を濡らさずに水分供給ができるため、病気予防に効果的です。
窒素肥料の過剰施用は、葉を軟弱にし病気に対する抵抗性を低下させます。適切な施肥量を守り、リン酸・カリウムをバランスよく施用することで、株を健全に保ちます。
密植の回避と清潔管理
密植を避け、株間を適切に保つことで、風通しと光環境が改善されます。また、罹病した葉や果実は見つけ次第すぐに除去し、ビニール袋に入れて畑の外に持ち出します。地面に落としたり、その場に放置すると胞子が飛散し、被害が拡大します。
収穫後の残渣も圃場や施設内から持ち出し、焼却するか土中深く埋める必要があります。これにより、翌年の伝染源を減らすことができます。
抵抗性品種の利用
品種選びも重要な予防対策です。うどんこ病に強い抵抗性品種として「カレンベリー」などがあります。栽培地域の気候や栽培方法に合わせて、病害に強い品種を選ぶことで、農薬の使用量を減らすことができます。
発生時の治療方法|農薬と有機資材の活用
病気が発生してしまった場合は、早期発見と迅速な対処が被害を最小限に抑える鍵となります。発生初期であれば、適切な薬剤処理で回復させることが可能です。

うどんこ病の治療
うどんこ病には、予防効果と治療効果を兼ね備えた殺菌剤が有効です。主な農薬として、以下のものが推奨されています:
- 予防・治療効果のある農薬:ラリー(myclobutanil)、プロキュア(triflumizole)、オービット(propiconazole)など
- 耐性菌対策:同じ系統の農薬を連続使用すると耐性菌が出現するため、異なる作用機作を持つ薬剤をローテーション散布します
散布は葉の裏側にも十分にかかるように丁寧に行います。発生初期であれば、7〜10日間隔で2〜3回散布することで、ほぼ抑制できます。詳しい農薬情報はいちごうどんこ病おすすめ農薬(株式会社イチゴテック)を参照してください。
灰色かび病の治療
灰色かび病は耐性菌が発生しやすいため、予防的な薬剤防除と発生初期の早期防除が効果的です。以下のような殺菌剤が使用されます:
- ボトリチス専用剤:ファンタジスタ、メリヴォン(pyraclostrobin + fluxapyroxad)、フォンテリス(penthiopyrad)など
- 散布タイミング:開花期から収穫期にかけて、特に開花ピーク時に重点的に散布します
薬剤散布だけに頼らず、換気や排水対策、葉かきなどの耕種的防除も同時に実施し、総合防除に努めることが重要です。詳細はいちごの灰色かび病対策(アリスタ ライフサイエンス)をご覧ください。
有機栽培での対応
化学農薬を使用したくない場合や有機栽培では、以下の資材が利用できます:
- 銅剤:コサイド3000やICボルドー銅水和剤など、有機JAS規格で使用可能
- 生物農薬:ボトキラー水和剤(バチルス菌)など、環境に優しい微生物資材
- 重曹スプレー:食品用重曹を水で薄めて散布する民間療法(予防効果のみ)
ただし、有機資材は化学農薬に比べて効果がマイルドなため、予防を徹底し、発生初期に複数回散布することが必要です。参考情報:いちごの病害虫防除(ファンタジスタ病害図鑑)
病気対策の年間スケジュール
いちご栽培において病気対策は年間を通じた計画的な管理が必要です。以下の表に、時期ごとの重点対策をまとめました。
| 時期 | 主な作業 | うどんこ病対策 | 灰色かび病対策 |
|---|---|---|---|
| 定植前(8〜9月) | 苗の健全性確認、ハウス消毒 | 親株の薬剤散布、健全苗の選別 | 前作残渣の除去、土壌消毒 |
| 定植後〜活着期(9〜10月) | 適切な株間確保、初期管理 | 予防散布開始(10日間隔) | 換気徹底、下葉除去 |
| 生育期(11〜12月) | 古葉除去、追肥 | 発生状況に応じた散布継続 | ハウス内湿度管理(70%以下) |
| 開花期(12〜2月) | 受粉管理、温度管理 | 開花前の予防散布 | 花弁除去、ボトリチス剤散布 |
| 収穫期(1〜5月) | こまめな収穫、摘み取り | 治療剤の使用(発生時) | 罹病果の除去、換気強化 |
| 収穫後(5〜6月) | 残渣処理、ハウス清掃 | 伝染源の除去 | 残渣焼却、ハウス消毒 |
この年間スケジュールを基本として、気象条件や発生状況に応じて柔軟に対応することが重要です。特に梅雨時期や秋雨の時期は、湿度が高くなりやすいため、換気と薬剤散布の頻度を増やすなどの対策が必要です。
よくある質問と対策の実践ポイント
Q1: うどんこ病と灰色かび病を同時に予防する方法はありますか?
はい、両方の病気に共通する予防対策があります。最も重要なのは風通しと湿度管理です。古葉の除去、適切な株間の確保、換気の徹底により、両方の病気の発生リスクを大幅に低減できます。また、混合剤や広範囲スペクトラムの殺菌剤を使用することで、一度の散布で両方に効果を発揮させることも可能です。
Q2: 農薬の散布間隔と収穫前日数の制限を教えてください
農薬ごとに「使用回数」と「収穫前日数」が定められています。例えば、うどんこ病用の「ラリー乳剤」は使用回数3回以内、収穫前日数3日です。灰色かび病用の「ファンタジスタ顆粒水和剤」は使用回数4回以内、収穫前日数1日です。必ず農薬ラベルを確認し、基準を守って使用してください。参考:いちごおすすめ農薬(株式会社イチゴテック)
Q3: プランター栽培でも病気は発生しますか?
はい、プランター栽培でも病気は発生します。むしろ、プランターは土の量が限られ、風通しが悪くなりやすいため、病気のリスクが高まることもあります。プランターでは、株数を欲張らず適切な間隔を保ち、水はけの良い培養土を使用することが重要です。詳しくはプランター・ベランダ菜園の完全ガイドをご覧ください。
Q4: 有機栽培で効果的な予防方法は?
有機栽培では、化学農薬に頼れない分、予防的な栽培管理がより重要になります。雨よけ栽培や点滴灌水を取り入れることで、胞子の飛散を抑制できます。また、コンパニオンプランツとしてニンニクやネギを近くに植えることで、病害を抑制する効果が期待できます。銅剤や微生物資材も定期的に使用しましょう。
Q5: 病気が出た株は抜いた方が良いですか?
症状が軽度であれば、罹病部位を除去し薬剤散布で回復可能です。しかし、株全体に広がり回復の見込みがない場合は、他の株への感染を防ぐため早めに抜き取り処分します。抜き取った株はビニール袋に密閉し、畑の外に持ち出してください。
まとめ|予防と早期発見が成功の鍵
いちご栽培における病気対策は、予防と早期発見・早期対処が最も重要です。うどんこ病は気温20度前後の春・秋に、灰色かび病は気温23℃前後の多湿時に発生しやすいという特性を理解し、発生しやすい時期には特に注意を払いましょう。
風通しの改善、適切な水管理、古葉の除去などの栽培管理を徹底することで、病気の発生を大幅に抑制できます。それでも発生してしまった場合は、早期に適切な薬剤を使用し、被害を最小限に食い止めることが大切です。
予防的な栽培管理と薬剤防除を組み合わせた総合防除を実践することで、健康で美味しいいちごを安定して収穫できるようになります。本記事で紹介した対策を実践し、ぜひ豊かないちご栽培をお楽しみください。
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